アイウエオ
カキクケコ

ほやねさんプロジェクト

2018/02/22

(左から)宇川さん、武さん、熊崎さん(土岐市役所)

「ママの悩みを解決できなくても解消することはできるはず」。そんな思いから生まれたほやねさんプロジェクト。活動に取り組んでいるメンバーに活動への想いを聞かせていただきました。

 

―ほやねさん、というネーミングが特徴的ですね。

武さん

宇川さんは兵庫県、私は福岡県と、メンバーのほとんどが他県から土岐市に来ているんですが、「ほやね」というニュアンスの方言が他県にはないんです。肯定でもなく否定でもなく、ただ共感するというニュアンスで「ほやね」という言葉があるように感じています。熊崎さんに以前お世話になった時にも、本当によく「ほやね~」と言っていただいて(笑) ただ受け止めてくれるというこの言葉が、響きも優しいし素敵だと感じています。

私は保健センターで働いているのですが、小さなお子さんを連れていらっしゃるお母さんたちが抱えている子育ての悩みは、解決する悩みばかりではなく、どちらかといえば解決しない悩みの方が多いんです。例えば、お子さんがご飯を食べてくれないという悩みは、いくら頑張ってもそのときには解決しないことの方が多いように感じています。それは、時間の経過や成長の過程の中で次第に解決される悩みであって、後になって「ああ大丈夫だったな」と振り返ることがほとんどです。でも、あとで振り返ってみれば何でもなかったと思えることも、現実に今悩んでいらっしゃるお母さんたちは必死に解決しようと取り組んでいます。そうした悩みに対して、資格や免許は持っていないけれども「ほやね~、辛かったね。」と聞いてくれることで、「解決ではなく解消する」という動きが定着すればいいなと思っています。それがほやねさんプロジェクトです。

 

―「ほやね~」という言葉はとても優しく聞こえます。ちなみに標準語では「ほやね」は何と言うのでしょうか。

武さん

「そうね」とか、「そうですね」ですかね。私は大分県にもいたんですが、九州は言葉がきついので、「ほやね」みたいな柔らかいニュアンスの言葉がなかったんです。

 

―活動としては、どのように進んでいくのが理想だと考えていますか。

熊崎さん

将来的には、色んな場所に「ほやね~」と聞いてくれる人がいるようになり、それがファミサポ(ファミリーサポートセンターのこと。土岐市では各地域で、子どもを預かってほしい人と子育てのお手伝いをしたい人が会員となり、育児について助け合う事業のことをさす。)のようなところともつながっていけば嬉しいです。

また、子育て期間だけでなく、子どもが大きくなってもお母さんはいろいろな悩みがあります。お母さんたちが悩みを聞いてもらえて、くつろぐことができてちょっと癒される、そんな場所や空間があるといいですね。お母さんたちがそこに行けば少し頑張ろうという気になる場所を増やしていけたらと考えています。

武さん

土岐市に住む人に「ここの良いところはなんですか?」と聞いても「何もない」と言われる方が多いです。福岡だと「あれもある、これもある、魚も食べ物も美味しいし」って尽きることなく自慢するんです。でも土岐の人は「なにもない」って言ってしまう。なので、「ここの良いところはなんですか?」と聞かれたときに「ほやねさんがいるよ」って返せるようになること、それが最終目的なのかもしれません。みんなが「ほやねさん」があることを自慢に思えるようになってくれたら嬉しいです。

子育てだけじゃなくて、介護している人もそうですが、色んな条件・環境で生きている中では、それぞれ苦しいことがあると思います。もちろん幸せであることが一番いいのですが、なかなかそこには辿り着けません。

物質的なものやハードをつくることはお金をかければできてしまうかもしれませんが、人の心の意識を変えていくことはお金ではできません。便利なものがなくても、例えば荷物を持ってくれたり、大変だねって言ってくれたり。そんなことで少し救われることもありますし、人は誰かにしてもらったことは忘れません。大分県に住んでいるころ、子育てで周りの人に本当に助けてもらいました。いつか大分に恩返しをしようと思っています。そうした気持ちが人に対する優しい気持ちにつながり、みんなの心のなかにほやねさんが生まれてくれればいいな、と思います。その前の段階として、カフェなどの場があるのもいいかもしれません。

 

―現在活動している中で楽しいことややっていてよかったと思うようなことはありますか?

宇川さん

私は今、子育て真っ最中なんです。そんなときにこのラボのお話があり、多治見市にはママズカフェが、瑞浪市にはミミカフェがあるのに、土岐市にはなぜ気軽に集まれる場所がないんだろうって思いました。

専門家ではなく、ボランティアでも構いません。愚痴だったり悩みだったりを気軽に聞いてもらえる場所があったらいいなって思っていたんです。それで活動を始めてみたのですが、人の意識が変わらないといくらハードが揃ったとしても意味がないんです。自分たちの活動がそのための一歩につながっているかもという部分にすごくやりがいを感じています。それに、子育てをしながら、目標とする環境づくりに自分も関わっていることに対する充実感もあります。

熊崎さん

子育ての環境として、地元でずっと住んでいる人はご両親や身内の方が子育てを手伝ってくれるという恵まれた面もあります。しかし、外から土岐市に来た人たちにどのようなサポートを用意できるか、という部分で足りない部分もあるように感じています。

この地域にあまり縁のない若い世代が移り住んだときに、はっと気づくとそばに頼れる人がいない、という状況が今出始めています。それに制度が追いついていないのかもしれません。

武さん

今後イオンモールなどができ、もっと外から人が入ってくる可能性もあります。今より土岐が住みやすいまちになるためには、外から来た人たちを受け入れることが一番重要になるかもしれません。そんなときに「お互いを思い合う」という気持ちを持てるかどうかはとても大切なことです。

 

―土岐市でのご近所づきあいについてはどうですか。

宇川さん

私自身は町内会などには参加したいと考えていたので、近所付き合いがあります。子どもが大きくなれば子ども会にも参加しますし、必然的に付き合いは広くなっていきます。

武さん

今のお母さんたちはスマートフォンなどがあり、情報をたくさん持っています。ただその情報にも色んなものがあり、全員に等しく当てはまっているわけではなく、どれを選んだら良いのかもわからない。それと、webやSNSに載っているような子育ての世界ってすごく輝いて見えるんです。お母さんは子育てをしながら仕事もでき、自分も美しくお化粧もバッチリ決め、子どももいい子で部屋も綺麗でそれが良いとされる世界。その世界には「いいね」しかないんです。「ほやね」がない。今日はすっぴんだけどいいか、という部分がないんです。

そうして、そうした世界と同じような自分でいなければと感じ、情報通りにやってみるがうまくいかずに落ち込んで、ふさぎこんでしまう。そしてさらに悪いループに入ってしまう。そうした状況が、今のお母さんたちに多いような気がしています。「助けて」と言えればいいのですが、「助けて」と気軽に言えない。どこに言えばいいのかもわからない。

そんなときに、気軽に行きやすいお母さんたちのためのカフェがあると違うのかなと思います。生身の人と話すことで、ネットの情報とは違う効果もありそうです。

 

 

―土岐市役所の新庁舎が完成した時にポップアップカフェを開くというお話を聞きましたが。

熊崎さん

そうなんです。まずはお母さんたちのための期間限定のカフェ(ポップアップカフェ)を開こうと計画中です。そこでみんなが集まり、ゆっくりお話ができるといいなと考えています。

また、ポップアップカフェの前段として、2018年5月の広報誌からほやねさんのエッセイを掲載していこうと動いています。

このエッセイは、「この人もほやねさん」という形で、普段の暮らしの中で何かのときに助けてくれたとか、ちょっと支えてくれたとか、その人がしてくれたことで自分の気持ちが楽になったことなどをエピソードとして紹介したいと思っています。

市民の皆さんには、それを読んでもらい「そういうことで人って気持ちが楽になるんだ」ということを感じていただきたいです。そして、優しい気持ちになってもらいたい。読んだ人が「私はこの人を紹介したい」とか「この人はいつもそこにいるリアルほやねさんなんだ」と感じることがあれば、その人にエッセイを書いてもらってもいいかもしれません。そんなほやねさんエッセイのコーナーを毎月1回のペースで配信していきたいと思っています。

なるほど。そういう方向性なんですね。

武さん

(メンバーが書いたエッセイの原稿を出して)今回のエッセイでは保健センターの市職員のことが書かれています。職員さんにも色んな職種の方がいて、子どものそばにいて関わる仕事の方もいらっしゃいます。その関わり方が本当に美しく、誰に対しても誠意をもって対応してくれているんです。時間がなくても、お母さんが言うことを話の腰を折ることなくずっとずっと聞いてあげています。なので、こうして今回のエッセイで紹介するつもりです。そのことが、少しでも職員の働くことに対するモチベーションにもつながると嬉しいなと思っています。

 

―それは、具体的にどのような関わり方なのでしょうか。

武さん

子どもがどうしたいのか、何を望んでいるのかを、表情や言葉、そして言葉以外のところから受け取ろうとしていらっしゃいます。子どもを一人の人格として見ているんですね。ただあやせばいい、危なくないように見ればいい、ということではなく、その子はどうしたいのかを一生懸命捉えようとしているんです。なかなかそういう方の姿は表に出てこないので、ぜひ伝えたいと思いました。来るわけではないですからね。

話は変わってしまいますが、小さいお子さんがいるお母さんは、子どもと過ごす時間がとても多く、逆に大人と話す時間がほとんどないんですよね。

宇川さん

いざ親たちだけで集まって話をしていると、毎日ではなくたまに会う集まりにもかかわらず、周りから「子どもをほっておいてこんなところで喋りまくって」と思われたりしてしまうこともあります。

なので、ママズカフェみたいに子どもを一緒に連れていける場所があれば、そこで子どもが騒いだとしても来ている人がみんな子連れなので許されるんです。そうした気が許せて話せる場所が土岐市にもほしいですね。

私は妊婦時代から妊婦のお友達もいましたし、情報も集める方だったのできつい思いは少なかったかもしれません。ただ、情報を集められないお母さんだと、児童館の存在も知らなかったり、どの店が子連れで大丈夫なのかもわからず、気まずい思いをしたりということはあると思います。

 

―今後、やってみたいことはありますか。

武さん

ほやねさんの活動に愛着を持ってもらうために、ほやねさんのキャラクターを考えてみようという動きがあります。ほやねさんになってもらう人にはほやねさんバッジをつけてもらうのもいいかもしれません。

また、まだ時期は決まっていないのですが、ほやねさんを育てる講座をやってみたいと思っています。まずは傾聴、聴くことについて専門家を呼び講座を開きたい。そこで認定を受けた人にほやねさんバッジを渡したいです。

宇川さん

私は、土岐市が子育てしやすいまちになってくれればいいです。それには人の意識が変わることが重要だと思いますので、そのためにがんばれたらなと思っています。

武さん

土岐の自慢はほやねさん。そうなったらいいですね。